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Channel: TOMIO KOYAMA GALLERY:東京・Singapore | 8/ART GALLERY
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シュシ・スライマン個展@小山登美夫ギャラリー、シンガポール

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10/23から12/8まで、シンガポールの小山登美夫ギャラリーでは、シュシ・スライマン個展「Sulaiman itu Melayu / Sulaiman was Malay」を開催しています。

シュシ・スライマンは1973年生まれ、マレーシア出身のアーティストです。これまでにシンガポール・ビエンナーレ、アジア・パシフィック・トリエンナーレ、ドクメンタなどの重要な国際展に多数出展してきました。日本においては、2008年東京国立近代美術館で開催された「エモーショナル・ドローイング」展に参加しました。小山登美夫ギャラリーでは、今年1月で行われたArt Stage Singaporeでのブースで「Muar Art Kindergarten」というインスタレーション作品を出展しました。今回の展覧会は待望の初個展です。

本展は「Sulaiman itu Melayu(スライマンはマレー人)」と題され、シュシが亡き父親を通して、自らのマレー人としてのアイデンティティやマレー文化、歴史について考察しています。

出展している「Sulaiman bought a home」という作品は父親が初めて家族のために買った家のレプリカです。今回は三つのパーツに分け、展示されています。こちらがギャラリー外のエントランスの様子です。


鑑賞者は自由に階段をのぼり家の中に入ることができます。



家の中に、ゴムで作られたシートが展示されています。彼女の父親はゴムの樹液を集める職業をしていたといいます。マレーシアのジョホールにある父親が持つゴムの木の農園で、彼女はゴムの木に父親の顔を彫り、木から採集された樹液を使って、ゴムシートの作品を作成しました。


ゴムシートにある顔は父親の顔です。周りの模様はイスラム教徒がコーランを読めるようになるための教科書の表紙に使われた模様だそうです。


また、家の壁に人が亡くなったときに暗唱されるコーランの一節、「Surah Al-Fatihah」がジャワ語で家の壁に刻まれました。



家のもう一つのパーツです。


窓から見た様子です。


こちらのペインティングは、シュシが父親の墓から取った土、彼女のドローイングと以前使用していたスタジオでありインスタレーション作品でもある、《Rumah》(2002-8)を燃やした灰を混ぜ合わせたもので描いた作品です。同じ素材における主題、物質的側面の価値をオーバーラップさせる行為を取り込んだ作品です。


こちらの作品も同じく灰と土で作られたもの、チャコールで制作されました。

Dari Tanah dia Kembali #6 (From the land he emerged #6), 2013
mixed media
38.5 x 28.0 cm
©Shooshie Sulaiman

また、マレーシア国旗、日本占領時代の紙幣、封筒を用いた平面作品も展示されています。

以下は今年マレーシアで行われた選挙の際、各政党が使っていた旗の赤と白の部分を切り、一つのマレーシア国旗にコラージュした作品です。シュシが描き続ける仮想のマレーシア祖先の顔、マレーシアの政治家の顔、彼女自身の父親の顔が重ねられています。

Negara, 2012-13
mixed media
183.0 x 244.0 cm
©Shooshie Sulaiman

日本占領時代に日本政府が発行したマレーシアとシンガポールで流通用の紙幣に、マレー人の像を転写したり、文字を印字している作品です。バナナの木などの熱帯植物が紙幣のモチーフにされたことはアーティストにとってとても興味深く、ローカルの文化および生活を尊重していたという側面に強い印象を受けたといいます。


Institusi Langsat (Langsat Institution), 2013
image transfer and graphite
9.0 x 15.0 cm
©Shooshie Sulaiman

また、こちらはシュシのお母さんが集めていた切手を封筒に貼り、転写と印字をした作品です。書かれた文字は、時々マレーシア歴史の古代王国や重要な君主の名前で、また切手は絶版のものであり、昔の時代や歴史を思い起こす作品です。


Maharaja Abu Bakar, 2012
image transfer and graphite
9.0 x 15.0cm
©Shooshie Sulaiman

シュシ・スライマンの作品を見たとき、インスタレーションが持つインパクト、ドローイング作品にあるパワフルさをまず感じます。そしてよりじっくりと見るにつれて浮かび上がってくるのが、作品のコンテキストに重なり合っていく制作プロセス、またその制作やパフォーマンスに関わった人たちとのインタラクションと感情、そして作品としっかりとつながっている歴史や文化。これらによって人間にとっての大切なものについて、深く考えさせられるような展示になっています。

展覧会は12月8日(日)までとなっています。シンガポール・ビエンナーレも開催されていますので、シンガポールにいらっしゃる機会があれば是非ご高覧下さい。

小山登美夫ギャラリーシンガポール

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